250字で花言葉
美 し い 姿 (紫蘭)
佐助:戦国 2012/5/17
「俺に貸せ」
忍働きの支度をしていると、足音荒く主が踏み入ってきた。
「忍屋敷に来るなって言ったよね」
「覚えておらぬ」
手にしていた筆はしかめ面に奪われる。
「引いてくれんの?」
「六文銭の代わりにな」
かつて今よりもっと幼かった主に、六文銭をつけろとねだられたことがある。
忍が所属の証を持つことはできない。一度だけ本気で命令に逆らった。
「お前は俺のものだ。その証は俺がつける」
何の気まぐれかと自然に出た溜め息に、「これから先もずっとだ」と返される。
「好きにしな」
差し出した頬をなぞる感触には、軽く鳥肌が立った。
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佐助の戦化粧は、任務のときだけ希望!
普段はごく普通の格好なんだろなとか考えると、こんな妄想も弾みますよね。
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美 し い 姿 (紫蘭)
幸村:戦国 2012/5/18 (花言葉は17日)
「俺に貸せ」
案内された部屋で、佐助は筆と薬椀を手にまさに戦化粧を施そうとしていた。
「忍屋敷に来るなって言ったよね」
「覚えておらぬ」
込み上げる何かに任せてその筆を奪う。
「引いてくれんの?」
「六文銭の代わりにな」
猿飛佐助は確かに真田幸村の所有物だと、時折り広く喧伝して回りたい衝動に駆られる。
忍が印をつけることはご法度らしいが、彼の身に一つ残すとしたら。
「お前は俺のものだ。その証は俺がつける」
「好きにしな」
あきらめの溜め息も、佐助の了承には違いない。
頬に添えた手が少し、震えているのが自分でもわかった。
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元々はまったく違う花・花言葉で書いていたのですが、
その花言葉に「美しさ」という単語が入っていたせいで、
昨日佐助で書いた分の幸村Ver.になってしまいました。
ああもう、どうして何がこうなったんだ…。
台詞だけはまったく同じです。
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永 遠 の 記 憶 (麦わら菊)
真田主従:戦国 2012/5/24
うだるような暑さと蝉の鳴声がうるさかったあの夏。
「佐助、起きろ」
伏せった佐助の影が日に日に薄らいでいったのを覚えている。
朝と晩ではそう変化ないように見えても、昨日と今日では確実に違う。
命が揺らいでいる。それに気づいてしまい、どうして気づいてしまったのかとぞっとした。
外は色と気配に満ちているのにと、部屋を支配する静寂を恐れた。
「佐助」
答えない名を何度呼んだだろう。
「佐助」
「何だよ」
「佐助」
「何だってばさっきからうるせーな」
気のない答えでも、あの夏とは違って呼べば返ってくる。
「…にやにやしてんなよ」
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佐助は夏の終わりに目を覚まして、ちゃんと生きています。
でも佐助だと、影が薄くなる=分身が消えかける って意味にも取れそうですね。
「答え」はできれば「いらえ」って読んでいただければなと思います。
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若 い 友 情 (日々草)
真田主従:現代 2012/5/25
帰ろうとしたら、傘がなくなっていた。
「やっぱりやられたか」
ごく普通のビニール傘を、印もせずに置いていたのがいけなかった。
「入れ」
どうせ帰る先は同じだからと、好意に甘えて相合傘。
しかし困るのは、野郎同士でテンションがあがらないということ。おまけに鞄が濡れないよう内側に入れて歩いていると、なぜか「遠い」と文句が出ること。
「ああもう、めんどくせー」
傘を奪い取り、先を持ち主に向けていったん閉じる。
どうせ家はすぐそこ。傘についた水滴も大量。濡れても差し支えないおあつらえむきのシチュエーション。
「くらえ!」
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ジャンプ傘(ワンタッチ傘)で小さい頃にやりました。水掛け攻撃。
佐助はこの後、びしょぬれになった幸村に傘を奪い取られて同じことされるけど、
もう傘にはあまり水が残っていなくて、悔しがる幸村という場面に続くんだと思います。
若いっていったら高校生ですよね!
それっぽい描写がなくても、白シャツ制服でご想像ください。
幸村の傘はごつくて大きいので、きっと皆が遠慮する傘です。
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愛 ら し さ (ホタルブクロ)
真田主従:戦国 2012/6/5
「お帰り佐助」
満面の笑みで「飲め」と差し出されたのは、あたたかな湯気の立つ湯のみ。
鼻先から伝わる強烈な臭いに、思わず顔を背けた。
「お前のために調合したのだ。疲れがとれる」
「何を入れたの?」
弁丸の口からは蓬やオオバコ等、任務前に効能を教えた名がずらりと出てくる。
「弁丸様、あの、これはちょっと…」
飲めば倒れるかもしれないと思った。
しかし目の前では弁丸が今か今かと待っている。まさか佐助が飲まないとは考えていないようだ。
屁とも臭いを感じていない弁丸の嗅覚に感心しながら、恐る恐る伸ばした指先は震えていた。
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体にいいどころじゃなく激マズな弁丸の薬湯。
入れたかった台詞は佐助の「それ、前に椿が枯れたんだぞ!」です。
弁丸が佐助に薬湯を煎じるのはこれが二度目で、一度目は上手く理由をつけて
こっそり隠れて庭の椿にかけたんだけど、そしたら木ごと枯れてしまったと。
でも250字では文字が足りず、一番書きたかった台詞はお蔵入りです。