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春コミペーパー
心の底から驚いたとき、人は叫ぶどころではなく立ちすくむしかないのだと聞いたことがある。俺は今、身を持ってその言葉の正しさを体感していた。動くこともできずに固まった俺を、ひいふうみい……四体の白塗りお化けがじっと見ている。
――侵入者か。
NOTEに手を伸ばしたところで、その白塗りのっぺらぼうお化けの間からひょこりと顔をのぞかせたのはリーダーで、そのおかげで俺はようやくこのお化けたちが、実は慣れ親しんだ人々であるということを理解する。
「な、なんだそれは!」
「パックっす!」
「清音くんもやる?」
「お肌、すべすべになる……」
「こういうのはね、若いうちからのお手入れが大事なのよ〜」
「うむ、なかなか気持ちが良いもんだな」
「………」
リビングに集ったメンバーが揃いも揃ってパック中とは、唖然として声も出ないとはまさにこのことだろう。
はじめもうつつもまだ若いじゃないか。こういうことは人の自由だとわかっているけど、そもそも累くんは男だ。失礼ながら――本当に失礼ながら、O・Dさんはどう考えても若いうちからなんて言える齢じゃない。リーダーにいたってはパックすることに何の意味があるというんだろう。ツッコミどころは満載だ。
それでもここで言い返してはドツボにはまるだけ。こういうときは、さわらぬ神にたたりなしが鉄則だ。ところがくるりと踵を返した俺を、累くんがわざわざ引き止める。
「ねえ、 清音くんもどう?」
「いや、いいよ俺は。肌なんて気にしないし……」
それは嘘偽りない俺の本心だったけれど、この言い方がまずかったらしい。累くんが顔色を変えた――といっても実際にわかりはしないので、雰囲気で俺は察した。
「清音くんだって今はそんなもちもちたまご肌かもしれないけど、すぐに曲がり角はくるよ!」
「そうっすよー、先輩」
「どんな相手にも油断は大敵だぞ、清音」
「その時になって後悔しても遅いのよ、清音ちゃん」
「うつうつします……」
いっせいに責められて、俺には何がいけないのかもわからなくて、半ばパニックになりながらリビングを後にする。玄関まで逃げてきて、ため息をついた。どうすれば良かったんだろう。どう言えば良かったんだろう。俺もパックしたいと言って、混ぜてもらうべきだったんだろうかと考えて、その光景にぞっとする。
玄関の姿見には、ほんの一瞬でげっそりした俺が映っている。もちもちたまご肌とは……と鏡を覗きこんだところに、玄関のドアが前触れもなく開いた。
「じょ、丈さん!?」
「なーに自分に見とれてんだ、清音」
いつの間に戻ってきたのか、ニヤニヤと笑う丈さんと鏡越しに目があった。見られた。そう思うだけでひどく恥ずかしい。おまけに丈さんは楽しげに俺の頭に手を伸ばしては、あろうことか「お前もようやく色気づいたか」なんて笑う。
気配も探れないほど動揺していたとは、何たる失敗、何たる不覚。しかも色気づいただなんて!
そして俺は精一杯の、信じてもらえそうにない弁解を口にする。
「ち、ちがいますっ!」
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春コミにて配布したガチャクラのペーパー小話です。ありがとうございました&お疲れさまでした。
ガッチャマン達がわいわいしてるだけ。
累くんがパックしてる姿に驚く清音先輩というネタはみずさんからいただきました!
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