250字で花言葉



人 を 喜 ば せ る (アケビカズラ)
丈&清音 2013/10/23


 市役所からCAGEへの道すがら、清音の様子がおかしいことには気づいていた。
「清音、なんでそんな不機嫌なんだ」
「別に何もありません」
 言葉とは裏腹に、清音はその険しい表情を改めようともしない。
「清音」
 催促するように名を呼べば、ややあって清音はおもしろくなさそうに「いつから」と口を開いた。
「いつから枇々木さんじゃなく名前で呼ばれるようになったんですか」
 つい数分前、「さよなら丈さん」と通りすがりの職員が声をかけてきたことを言いたいらしい。
「……」
 清音の胸に巣食ったものが嫉妬だと理解してしまえば、理由を答えるよりも自然と浮かんでくる笑みをこらえるだけで精いっぱいだった。


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   丈さんが「丈さん」って呼ばれるようになったのは市役所に来た清音くんが
   「じょうさん」って呼んでたのを聞いた人が真似したからですきっと。
   元を正せば自分のせいなのに嫉妬してしまう清音くんも可愛いですね…。

   どうしてもどうしても250字におさまりきらなかったので280字です。無念。



* * *



役 に 立 つ 知 識 (オランダセリ)
丈&清音 2013/10/30


 それが夏だろうが冬だろうが、夜は裸で寝ると決めている。元から寒さには強い体質らしく、体調を崩したことは一度もなかった。――少なくとも昨日までは。


「8度6分、けっこうありますね」
 体温計をケースに戻し、「だから何度も言ったじゃないですか。風邪ひきますって」と清音がどことなく楽しげな様子で世話を焼く。まるで服を着ていなかったことに原因があるかのような口ぶりだ。
 布団をはぎ取った寒がりはどこの誰だと反論したくても、このかすれ声では伝わらないだろう。
 熱がさがったら覚悟していろと、差し出された服に袖を通した。


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   一応お題の「役に立つ知識」=「服を着ないで寝ると風邪をひく」ってことで。
   丈さんは暑がりとまでいかなくても、人よりもずっと寒さには強いと思います。
   清音くんは夏でも長袖を着てるので、暑さには強いけど寒さには弱そうです。
   布団をはぎ取られて凍える丈さん……。



* * *



忍 耐 (冬コスモス)
丈&清音 2013/11/20


「そんなくだらない理由で……」
 丈の口から飛び出した言い訳に、清音はまずあんぐりと口を開け、そして取り繕うことなく率直に感想を告げた。さらにため息までついて見せると、丈の肩は目に見えてがっくりと下がる。
「その言い方はないだろ清音……」
「俺の気遣いを返してください」
 気に病むことがあるのではと、増えていく煙草を清音なりに心配してみればその理由がこれだ。

 キスくらい好きなときにすればいい。そう思ってはいても、直接伝えるのは照れくさいから。
「今日だけ特別ですよ」
 口元の煙草を引き抜き、ネクタイを手繰り寄せた。


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   『気がきく(ヒメツルソバ)』の続き。タイトルの忍耐って丈さんのためにある言葉ですね。
   煙草を増やした理由を問われ、正直に述べたら呆れられたけど、
   でも清音からキスしてもらえて良かったね丈さん!なつもりです。



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こ よ な き 魅 力 (リトープス)
丈&清音 2013/12/6


「その恰好には似合いません」
「そうか?」
 湯気との戦いを放棄した丈が、必要もないのに髪を結んでいたゴムにまで指をかける。
「これならどうだ?」
「……もっと似合いません」
 仕事帰りなのに眼鏡を外し、髪までほどいたその姿。清音からは知らない人のように見えてしまう。内心の動揺を隠そうと、ラーメンに視線を落とした清音を丈が笑った。
(ずるいよなあ)
 見慣れぬ姿に清音が胸をざわつかせていることなど、丈はすべてお見通しなのだろう。その上でこうして清音を翻弄するのだから、まったく枇々木丈という男は性質が悪いと思うのだ。


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   オンオフのギャップとそれぞれが混ざるのと、どっちがドキッとするでしょう……。
   とはいえ、一緒に暮らしてた間に見慣れてる可能性もありますね。
   (帰宅直後とか)

   眼鏡がくもって困る丈さんを見てみたい。



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秘 密 の ひ と と き (クレオメ)
丈&清音 2014/9/2


 雨が降る日の丈は、その身に抱えた炎のせいかよく調子を崩す。以前は誰にも悟らせようとしなかったその不調を最近は隠さなくなった。
 ド派手なオブジェの上からやれ喉が渇いただのやれ肩をもめだの言われてカチンときそうになっても、清音が丈を邪険に扱うことなどない。
「すがねー」
 満面の笑みで丈が清音を手招く。
「……なんです」
 近寄ってはならない雰囲気を感じつつ、まさか人に向けてポカリを放り投げるわけにもいかない。差し出したペットボトルごと手を取られ、その腕に包み込まれて清音は仕方がないと息を吐く。
「今日だけですよ」


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   『あの人が気がかり』で書いたように、雨の日に体調が悪い丈さんいい!と思っています。
   清音に甘える丈さん……。




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