250字で花言葉



や わ ら か な 気 配 り (夢百合草)
ユキと夏樹 2013/3/13


「そろそろ見頃だよ」
「行ってごらん」
 すれ違う島民に声をかけられながら、ユキはスマホから届く夏樹の指示に従って進む。その行く先について夏樹は何も言わない。
 やがて大きな角を曲がった先で、満開の山桜がユキを出迎えた。
「うわすごい」
『そこ、観光客には内緒な』
「なんで?」
『島民の秘密スポットだから』
「そうなんだ」
 人々が教えてくれていたのはこのことかと、桜を見上げてユキは知る。もしかしなくても、受け入れられていると素直に思った。
「夏樹」
『ん?』
 ユキはその喜びを電波に乗せる。
「ありがとう」
『どういたしまして』

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   島民だけで大事に守ってきたものを教えてもらえるのって、
   一員だよって言ってもらえたのと同じことかなと思いました。



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効 能 (ミント)
ユキと夏樹 2013/6/9


 階下から漂うおいしそうな香りに、ハルは「お腹すいた!」と叫んで階段を駆け下りてしまった。
「ほら」
 夏樹は遠慮するユキからドライヤーを奪って背後に回り込み、ユキがさっきまでハルにしていた構図そのままに温風を当ててやる。
「雨すごかったね」
「ほんとにな」
 弁天橋の半ばで急な雨に降られ、しらす亭に着いた頃には三人とも全身から水をしたたらせていた。
「前髪は自分で乾かせよ」
「うん」
 ユキの使うドライヤーの風に乗り、慣れた匂いが夏樹に届く。同じシャンプーを使えばそれも当然のことなのに、どうしようもなく心臓が跳ねた。

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   通り雨にあって宇佐美家のお風呂を借りました。ドライヤーで乾かしあいっこしまいた。
   そこでドキッ!という状況です。
   効能=スパイス のようなものだとお考えください。



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打 ち 明 け ら れ な い 恋 (月見草)
ユキ 2013/6/21


 夜は孤独だ。ひどく孤独だ。誰もが夢の国の住人になってしまって、この世には自分しかいない気さえしてくる。
 そんな夜が寂しいからと言って寝付いた祖母を起こすわけにはいかない。朝が早い夏樹に電話することもできない。
 ふとした瞬間に目が覚めて、そのまま眠れなくなってしまうことはたまにある。そんな夜、ユキはベランダで朝日が昇るのを待つ。
「早く……」
 夜が終わればまた夏樹に会える。一緒に釣りができる。

 きっと夏樹なら笑って、「遠慮せずに電話しろ」とユキの頭を小突くだろう。
 だからユキは、朝が来るのをじっと待っている。

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   ウララを釣り上げて夏樹が渡米するまでの間くらいのつもりです。
   午前3時が一番孤独を感じる時間…、というのは以前にも書きましたが。
   家に誰もいなくて夜が不安で、でも朝になれば一人じゃないことを確認できる。
   そんな喜びを、ユキくんは誰よりも大切に温めているんじゃないかなと思います。



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受 難 (時計草)
ユキ&夏樹 2013/8/21


 帰国した夏樹に「一回やってみたくて」と連れてこられたラーメン屋。二人なのになぜかカウンターの端と端に座らされる。
 やがてユキの前に運ばれてきたラーメンには、注文した覚えのない煮卵がついていた。
「?」
 ユキの視線を受けて店員が恭しく示したのは、斜に構えて肘をつき、水のグラスを掲げた夏樹。
「あちらのお客様からです」
「……」
 笑いを堪えるだけで精一杯だったユキに、味なんてわかろうはずもない。


 ラーメンを前にすると、必ず思い出して笑う。そのせいでユキは、外でラーメンを食べられなくなった。
「夏樹のせいだからな!」

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   今日の昼間にRTで回ってきたネタがほんとにおもしろくて…つい…。
   アメリカで聞いてきたのか知らないけども、バーに行く勇気はなく、
   ラーメン屋の煮卵でカッコつける宇佐美プロです。



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気 前 の 良 さ (オレンジ)
ユキ&夏樹 2013/9/24


「ユキ、これ食えるか」
 小銭ではち切れそうなほど膨らんだ財布を手に、夏樹が某アイスの自販機を指差す。
「食べられなくはないけど」
「これでいいならおごる。俺はこっち」
「いいの?」
 珍しいこともあるものだとアイスを受け取り、半分ほど食べたところで交換してお互いの味を確認し合う。
「ごちそーさま」
 礼を言い、ゴミ箱を探すユキの背後で再び自販機からアイスの落ちてくる音がした。
「次はこれな」
「……まだ食べる気?」
「今のうちに全種類制覇しとかねえと!」
 新しい味が次々出るから油断できないと、日に焼けた顔で夏樹は笑った。

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   17歳のうちにセブンティーンアイスを全種類制覇!が夏樹の目標です。
   誕生日に合わせてアメリカから帰ってきたら新しい味が出てて、駆り出されたユキくん。
   アメリカでプロになった夏樹を少し遠く感じてしまってたユキくんだけど、
   やっぱり夏樹は夏樹だな変わんないなって再確認。



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