250字で花言葉
深 い 思 い や り (かすみ草)
ちびユキ&ケイト 2013/9/22
「ただいまー」
「おかえりなさい、ありがとうユキ」
おつかいという名の大冒険を終えて満足げなユキから品物とお釣りを受け取り、目を輝かせて待っているその口へ焼き立てのクッキーを一枚入れる。
「あら? ユキ、お釣りが少し足りないようだけど……」
どうしたのかと尋ねてみれば、ユキは口の中のクッキーを一生懸命かじりながら手を体の前で組んでもじもじしている。
「あのねあのね……」
しゃがむように促され、耳に手を当てて打ち明けられた秘密に、ケイトは「あらまあ」と声を出して笑った。
――あのね、おじぞうさんにあげちゃったの。
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ちびユキちゃんは、きっと道端で誰かがお供えしてたのを見たんでしょうね。
ケイトさんはこの後、お花を持ってユキくんと一緒にお地蔵さんのところへ行くと思います。
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気 が き く (ヒメツルソバ)
えり香 2013/10/6
夏樹のいない間、たまにユキくんと二人で飲むこともあった。ただユキくんは自分との仲を噂されることを申し訳ないと思っているようで、なるべく「そこで会ったので」と取り繕える距離でいたいらしかった。
人の目に触れるところに年頃の男女がいればそこがバーだろうが露店のベンチだろうが関係なく話題になるものなのに、見当違いのところに遠慮してそれで気を遣えたと思っている。
「ユキくんは優しいね」
「……そうかな、そうだといいけど」
嫌味でなく本心から告げると、彼はジョッキを手にしたまま日に焼けた顔で笑う。嬉しそうだった。
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夏樹とえり香ちゃんのお話(夏ユキ前提)から、削った一部分をサルベージ。
このシーンを書きたくて書き始めたはずなのに、ままならないものです。
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永 続 (コルチカム)
ユキ 2013/11/5
「もうすっかり秋だってのに」
ハルが近所の小学生からもらってきた、薄赤い花が咲く朝顔の鉢。
夏の風物詩だったはずの朝顔は、初夏から夏の盛りを過ぎさらに秋を迎えても、玄関脇で大きな花を咲かせていた。
「あれ」
雪が降るまでこのまま咲いていたらいいのにと期待していた朝顔は、冬の風にあっさりすべての葉を落としてしまった。
「なんだ、枯れちゃったのかよ」
毎朝「おはよう」と話しかけていた相手がいなくなり、少しだけ残念な気持ちで鉢を片づける。残された置き土産を封筒に入れ、靴箱の隅にしのばせることにした。
「また来年な」
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朝顔とユキくんが書きたかった。
種を植える=来年も再来年もずっと。
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逆 境 に 立 ち 向 か う (浜菊)
夏樹&アキラ 2014/9/3
「待てよ店長、ダメだ!」
「お前もだタピオカ、行ってはならん!」
一匹と一羽がどうにか解放されようと、夏樹とアキラの腕の中でもがいている。ヘミングウェイの外壁に何かがへばりついていた。
「どうし……」
何事かと壁に近寄ったユキの前で、そのシミらしきものがもぞりと動いた。ギョッとしたものの、すぐにアマガエルだと気づく。
「ただのカエルじゃん」
「お前そんな悠長に、カエルだぞ!」
「タピオカが興味津々じゃないか! 俺はどうしたらいいんだユキ!」
カエル相手に腰の引けた二人に、ユキは呆れるしかない。
「が、がんばれ……」
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餌釣りするときはもっとすごいもの掴んでるくせに……。ってユキに冷たい目で見られたらいい。
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も う 大 丈 夫 (仙人草)
夏樹 2014/9/12
そんなことが言いたかったわけじゃないのにと、散々な気分で夏樹は定休日のしらす亭を後にした。真理子と出かけるのを楽しみにしていたさくらの様子がここ数日、余計に夏樹を鬱々とさせていた。
「雨なんだから仕方ないだろ」
追い打ちをかけられて曇った妹の顔をしばらく忘れられそうにない。
釣りができないのも妹に子供じみた八つ当たりをしてしまったのも、すべてこの雨のせい。
逃げ出すようにやってきたヘミングウェイでは、釣具屋には似つかわしくない工作大会が催されていた。ハルの楽しげな声が響く。
「あ〜した晴れますよ〜うに!」
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八つ当たりしちゃって自己嫌悪とか、この時点ではまだ受け入れられない家族の形とか、
いろいろでぐちゃぐちゃになりそうになっても、こうしててるてる坊主を作ればいいと思います。
何気ないやさしさ(ハル自身はそれが誰かを救うとは気づいてない)にほっとすることもあったはず。