250字で花言葉



あ な た が い れ ば (タバコ)
2012/8/9


※ユキとケイト


「ばあちゃん、気をつけてよ」
「ありがとう、大丈夫よ」
 急な下り階段を気遣う孫は、こちらへ向けて手を差し出そうかどうしようかを迷っている風だった。
 優しい子。
「ユキ」
 名を呼んで手を伸ばせば、ほっとしたように手を伸ばし返してくれる。
 けれどその手は取らずに、隣まで歩みを進めた。
 そっと腕をからめると、案の定ユキは真っ赤になって慌てて腕を引こうとする。
「ば、ばあちゃん?」
「たまにはいいじゃないの」
 にっこり微笑めば、ユキも「降りるまでだけだよ」と観念して下り始めた。
 階段下までのほんのひと時を、小さな紳士と共に。



* * *



※ハルとココ


「つまらんっちゃ」
 江の島。DUCK。調べることはいくらでもあるけれど、今日は一日中ベンチに座って海を見ていた。
「ココー!」
 ずっと後ろから兄の声がして、どうやら学校が終わったらしいと知れる。
「つまらんとよ」
 そう仕向けたのは自分なのに、またすぐユキ達と釣りに行ってしまうのだから。
 ああでも、振り向いておかえりを伝えなければ。
「ただいま!」
 言葉と腕が降ってきて、ベンチの後ろから頭を抱え込まれる。
「兄ちゃん、どげんしたと?」
「ココ、ただいま」
 耳のすぐそばで聞こえる優しい声がくすぐったい。
「……おかえり、兄ちゃん」



* * *



※夏樹とさくら


 いつもならそろそろ帰ってきてもいいはずなのに。
 待ちきれず、薄暗くなってきた道をヘミングウェイに向かってひた走る。
「お兄ちゃん!」
 走ってきた勢いを自分でも止められなくて、振り向く前に背中から飛びついた。
 高校生の背は高い。いくら背伸びをしても、胸の辺りまでしか届かないけど。
「さくら、算数のテスト100点だったの!」
「そうか、やったなさくら」
「この間お兄ちゃんが教えてくれたから!」
「いいや、さくらが頑張ったからだよ」
 100点を取ったことも撫でられる手の感触も光る笑顔も嬉しくて、もう一度、今度は正面から抱きついた。



* * *



※アキラとタピオカ




* * *



※ハルと夏樹とアキラとユキ


 いつもの堤防、いつもの景色。いつもの釣り。

 ハルの手にしたサンドイッチを狙って鳶が飛んできた。
 間一髪で襲来を避けたハルだったが、それは狭い堤防の上でのこと。バランスを崩してよろめいた。
「ハル!」
 宙を泳いだハルの手をとっさにユキが掴む。ハルに引っ張られてユキが倒れかかるのを夏樹が支えたが、時すでに遅し。転がりだした石が止まることはない。
「アキラ!」
 アキラは夏樹の手を掴まなかった。映画のワンシーンのように海に落ちていく3人を笑って見ていた。しかし、夏樹の手がそんなアキラの足を掴んだ。


 青い海に抱かれて夏。



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