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雪と戯れて(1組)
「さみ・・・・・」
息を吐いてみると案の定真っ白。
いくら普段暖かい地方だとはいっても、雪が降れば寒いものは寒い。
日本列島を寒気団が襲ったこの週末。降ることはあっても積もることはあまりなかった埼玉でもそれは同じ。踏み降ろせば足が埋まる程度には積もった雪。
雪の降らない地方ではほんの少しの雪でダイヤが乱れるとはいうけれど、なんとか通勤・通学の便は普段と変わらず動いていた。
さすがにこんな日に自転車で登校するのはためらわれて、でも朝の連絡網で学校が休校になることはないと知っていたので今日だけは電車通学に切り替える。
身に染み付いた習慣のおかげなのか、朝練がないとわかっていてもゆっくり寝ていることはなく、せっかくだからと他の生徒よりも早い便で登校する。
(寒いけど、ちんたらしてないでよかったかも)
校門までの道のりはまだ足跡も少なくきれいなものだ。空を見上げればちらほらと雪も落ちてくる。きっと登校する生徒が増えれば校門前に積もった雪も跡形もなく踏みつぶされて土と混ざってしまうだろうから、その前の状態を独り占めしているようで気分がいい。
手を伸ばしかけて手袋をはずす。
すでにスニーカーは雪で濡れて靴下まで冷え切っているが、この上手袋まで濡らす必要はないだろう。
手すりの端に手を置いてそのまま歩くと、スピードに沿って上に積もった雪が落ちてくる寸法だ。
(我ながら子どもじみてる。か?)
小さい頃は傘の柄で高いところの雪を落として遊んだものだ。雪が積もること自体が珍しいのだから、手すりに積もった雪を落として遊ぶくらいは16歳になった今でも許されるだろうか。
「なーにやってんだ、栄口」
「!!?」
「!?」
『………』
ふいに声をかけられて驚いた自分の様子に、声をかけてきた相手も相当に驚いたらしい。
「ゴメン、驚かせたみたいだな」
「ああ、いや。オレこそごめん。早いな巣山」
「栄口もな」
「目、覚めちゃって」
「オレも」
手袋をはめて止まりかけた足を進める。校門までは少し。
「で、何やってたんだ?栄口は」
「ああ、えっと。何ていうか……」
(雪を落として遊んでましたってバカ正直にいうのもなんか恥ずかしいよな)
とは思うものの、適当な理由も思いつかない。
「雪落として遊んでた」
「オレもちっせー頃はよくやってたな。最近は雪で遊ぶこともめったになかったし」
「こんなに降るのは久々だしね」
「ほれ」
巣山の視線の先。校門の上にはまだ手付かずの雪が厚く残っている。
「これから登校するヤツラを迎えてやるか」
巣山は手袋を外して雪をかき集め始めた。
「何すんだ?」
「雪だるまだよ、雪だるま。門の上に乗っけとこうぜ」
栄口も手伝えよ。そう急かされて再び手袋をはずす。
夏の朝練に比べればずいぶん遅い時間だが、雪の朝に少し早く来ただけで意外なおまけがついていた。
ほんの小さな雪だるまだけど、一応雪遊びといえなくはないだろう。
(夕方までもつか?)
久しぶりの雪遊びに朝から気分が躍る。1日はまだ始まったばかり。
今日の天気はあいにくの曇り。でも今日ばかりは曇りがありがたい。夕方まで雪がもてば放課後もまた雪を楽しめるかもしれない。
「できた!」
「ちっせー」
思いっきり力を込めて握ったせいか、思いのほか小さくなった雪だるまを門の上に据える。これから登校する生徒がこの雪だるまを目にするだろう。
(誰かに見てもらえるといいな!)
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