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1:首脳会議
「そういえばさぁ、学校祭どうする?」
花井の部長ノートに本日の首脳陣会議の決定事項を書き込みながら栄口がそれまでの議題であった「消耗度の激しい用具の入れ替えについて」から話を変える。
パラパラとページをめくって先々週の部長会議の記録を探す。
「そろそろ決めないと〆切り来そう」
「あー、部活対抗のか?参加申し込みいつまでだ?」
「今週末って書いてある。生徒会担当の教員まで用紙を取りに行くことだって」
「でも部活対抗のって別に強制じゃないんだろ?んな練習時間だってねぇよ」
西浦の学校祭は模擬店や出し物を多く取り入れた学校行事の中でも一大イベントだ。どのクラスも夏休みから出し物の練習を始める。田島の話によるとここらの学校の中では規模も大きく、地域の人間も大勢訪れる祭りらしい。
初日は模擬店による販売。二日目が発表の時間に当てられ、クラス・部活に果ては有志の出演等、その内容も多岐に渡る。早ければ5・6月からすでに演目内容を決めているクラスもある。
イベントを楽しみたい気持ちはあるが、いかんせん学校際の季節といえば夏大は終わっているにしても秋大に向けて練習はますます厳しくなっていく頃。最低限クラスの手伝いはしなければいけないにしろ、わざわざ部活でまで張り切って参加する必要はないだろう。
「それはそうなんだけど」
クラスのヤツラに聞いてさ。と栄口が人差し指を立てる。
「勝った部活には金一封が出るって。去年優勝した文芸部はそれで新しいパソコン買ったらしい」
「え、それって、パソコン買うくらいもらえるってことだよな?」
「パソコンって一台どれくらいだ?」
「そりゃピンからキリまであるけど、まぁ10〜20万くらいだろ」
「10〜220万。けっこう出るな」
パソコンを買えるくらいということは、安く見積もっても最低10万はもらえる見込みがあるということだ。
しがない公立の学校祭。一介の企画にこれほどの賞金が出るとは。これは意外だ。
「10〜20万あれば用具はムリにしてもサプリ系なら十分だぜ」
筋肉増強のためにかかさず飲むプロテインはモモカンが一括で大量に購入してきたプロテイン。買いだめしてあるとはいえ2学期が始まる頃にはきっと残りも少なくなっているはず。
「そういやだいたいどの部活も出るとはこないだの部長会でも言ってた。去年とか何やったんだろうな。他の先輩たちに詳しく聞いとくべきだったぜ」
金一封と聞いて俄然目の色を変えた、唯一1年生で主将を務める花井は他の部長からかなりかわいがられている。
わからないことだらけであるのはもうどうしようもないと開き直って花井は他の部長に積極的に質問にいくし、逆に他の部長たちからすると1年生ながらそれに負けまいとする花井をまるで弟のように感じてしまうらしい。
とはいえ今さら聞いても今年の内容を他の部長が教えてくれるわけはないだろう。野球部に先輩がいない以上、ここは浜田を始めとした応援団のメンバーを頼ってみるしかなさそうだ。
「去年の学校祭のビデオとかないのかな。それ見れば傾向だってわかるんだろーけど」
「そういうと思ってオレ去年のビデオシガポに見せてもらったんだけどさ、けっこうおもしろかった。クイズとかコスプレファッションショーとか創作ダンスとか。部活と全然カンケーなくて」
「すげえな栄口、いつの間に」
「だろ?オレらにも稼げるチャンスがあるならみすみす見過ごせないと思ってさ」
「クイズにコスプレファッションショーに創作ダンスか。そんくらいならオレらにもできっかな。金一封。狙わない手はねーかも」
「人数少ないオレらにも出来るの考えてみる?優勝できなくても入賞できればちょっとはもらえるよ」
「よし、じゃあ参加で申し込むか」
「決まりだな。誰もモンクいわねーだろ」
トントン拍子に話は進んでいく。金一封はたいそう魅力的だ。
「ただ、何するかが問題だよ」
「堅実にいくかウケ狙ってくか。まずそっから決めるか」
「ウケ狙うつってもな。誰かそういうネタ考えられるか?」
「・・・・・オレムリ」
「・・・・・オレもちょっと」
花井と栄口はお互い顔を見合わせてお手上げのポーズを取る。
「ま、どう考えてもお前らはネタを考えるタイプじゃねぇよな。どっちかってーといじられるキャラだし」
「それゆーなら阿部だってそうじゃん」
「オレはちげーよ」
「どこが」
「ハイそこまで。時間ねーから話戻すぞ」
不毛な舌戦が繰り広げられかけたところで花井が制す。時計を見上げると昼休み終了までは残り10分。
「巣山に沖、西広もどうかな。篠岡だと野球ネタになりそーだ。オレらだけ楽しんでも勝ちは狙えねぇ」
野球好きは大勢いるかもしれないが、どうせなら万人ウケのする内容のほうが望ましい。
「水谷と泉くらいならなんとか笑いの取れるネタ考えられっかも」
「後は田島と三橋か」
田島と聞いて想像されるネタはあまりきれいなネタではなかった。期せずして3人とも同じことを考えたようだった。こればかりは本人のせいだからどうしようもない。
「田島に任せるとヒドイもんができそうだ」
「それだけはやめようよ」
「よし。笑いに走ると暴走するヤツラも出てくるだろうしここは手堅くいく。それでいいか?」
「おお、いいよ。他のヤツラにも案出してもらおうぜ」
「だな。どうせなら次のミーティングの日にシガポにビデオ見せてもらおう。そっちの方が案も出やすいかも。栄口デッキの手配頼めるか?」
「はいよ。シガポに相談してみる」
「できれば各自案を一つ持ち寄っていいの選ぼう。金一封。狙ってくぞ!」
『おお!』
→2:今日はミーティング!
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